意匠的な軒

今回はシンプルに住宅の一部を切り取ってお伝えします。
『機能性と意匠性のステキな関係』https://f-tool.net/column/column-2850で取り上げた軒ですが、書いててもう少し掘り下げてみたくなったのでお付き合いください。
軒といえば屋根と一体になった部分の軒と、庇など窓の上や、玄関の庇など
独立した形で取り付く部分もあります。
それぞれ機能的な部分はお伝えしましたので、今回は意匠的な観点と、そこから見えてくる暮らしの観点で行ってみましょう。

中国から伝わった建築様式

軒に大きく関係する屋根
まず屋根の続きの部分ですが、まず特徴的な屋根というと、住宅ではないですが神社やお寺の屋根はかなり特徴的ですね。
小学生のころ、よく学校の近くのお寺に写生に出かけ、あの形や、たくさんの瓦を描くのに苦労した記憶があります。
お寺の屋根と、神社の屋根には違いがあるそうです。知ってますか?
少しの話しはそれますが、お寺は入母屋という屋根、神社は切妻屋根と基本的には形が分かれ
素材もお寺は瓦を使い、神社は茅葺や板葺きなどの違いがあるそうです。
そして軒先に向かって反りあがったあの特徴的な屋根。
住宅ではあまり見られないのは、中国から仏教と共に伝わったので中国の建築様式も取り入れたみたいです。
しかし実際は日本の風土には不向きで、あの反りあがった軒は雨風にさらされやすいので、反りを抑えたといわれています。もし住宅であの屋根にしようとすると手間がかかりすぎますよね。

軒の出のいろんな効果

そしてもう一つ、もともとは茶室様式として、繊細で質素な造りで景観を取り込むために作られた数寄屋造りの屋根。
私の好きな屋根です。すっきりとしている中に優雅さと上品さを兼ね備えたような姿。
一文字屋根と銅板葺きのコントラストは年月がたつほど魅力を感じます。
屋根の形と共にすっと伸びた軒は、軒下も含めた何とも言えない空間を演出しています。

軒下の空間は広く取れると、日差しを遮りながらも景観を楽しむことができ、また雨の日の風景を楽しめる風情のある場所でもあります。
さしずめ現代ではBBQをやったりウッドデッキと組み合わせてアウトドアを楽しむ空間ですかね。
庭側だけでなく、米国などで見かけるカバードポーチなんかにも軒の出は不可欠ですよね。

軒を出すにはたくさんのハードルが

現状の建築基準法では、軒の出は1mを超えると一部が建築面積に加えらるためコストがあがったり、他には隣地の境界線に建物が近づくことが多く、軒を出すことに制限があったり、高さ制限や北側斜線、道路後退。軒の出を出すには乗り越えるハードルがあります。
また構造にも関係してきます。
建築途中でもっと伸ばしてとは簡単にいきません。
建て方も終わりに近づくとき、屋根に細長い木が何本も伸びてるのを見かけたことがあるのではないでしょうか。
軒の出をたくさん出したい場合は、あの木を太くすることで強度を持たせて伸ばしたり、腕木を出して補強したり、伸ばした先の軒桁を受ける柱が必要だったり。
しっかり計画段階で検討することが必要となります。

外観をも決める軒の出

現代は住宅建材の技術も進み、雨漏れしない納め方の工夫や、外壁材の進化
窓の断熱性など、必ずしも軒が必要ではありません。
軒の出がないお家の外観も、きっちり機能と共に意匠性にも好印象があります。
たかが軒の出ではなく、簡単に済ませる部分ではなく、しっかり用途と暮らし方を反映した軒計画は必要だと思います。
雨の日に、傘を忘れて雨宿りしてると、偶然の出逢いが訪れる場所!それが軒下!
いつの時代やねん!

スタッフ紹介

前田敏行

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