子供のような5人のおじさん

とある設計事務所に私を含め5人のおじさん達が顔を合わせる。
組み立て前のそれほど大きくもない器具を箱から取り出し、あーでもないこーでもないと、悪戦苦闘。
パスタマシンだ。
パスタマシンは、パスタの生地を底に複数の小さな穴があいたカップに入れ、レバーを引きながら上から圧力をかけ絞り出す仕組み。

そのパスタマシンを前に、ある動画を観ながら、5人のおじさん達が代わる代わるパスタマシーンをいじっている。
動作を確認しながら、ここをこうすると動きに無駄がなくなるとか、使いやすい高さはどうとか、穴の径や数、形状はなどなど
新店舗出店に伴い、オーナー様と設計者、クリームを理想の太さで均一に、そして衛生的にするため、樹脂素材の扱いに長けたプロ、そしてその器具を使いやすい高さにするためと、意匠性を持たせるために声がかかった私たち。
パスタマシンを改良して、マロンクリームマシンを作ろうとしているのだ。

5人のおじさん達がその小さな器具を前に、可能性を求めて試行錯誤している姿は
まるで子供のよう。
真剣に考え、意見を出し合い真面目に取り組んでいるのだが、なんだかとても楽しそうな雰囲気。
まさにこれがモノづくりの原点。
長い時間をかけ、思いつく限りの方法を出し合ったのだが、結局答えは出ず持ち帰ることに。

モノづくりの先にあるもの

しかし、この数時間で感じ得たものは大きかったと思う。
ここまで25年間の間、建築関係に携わってきたがこの感覚を忘れていたような気がする。
住宅の多くは、メーカーで作られた既製品を扱って、それが納まるようにしているのが現状だと思う。
知恵を出したとしても、メーカーに製品としてなかったり、又はその商品の納まりに従い
もっとこうしたいがあったとしても『出来ない』を発してきた。
いつしかこうでないと出来ないという先入観に囚われていたように思う。

現場でのやり取りでもよくある光景だったのが、職人も今までの経験でやれることと、やれないことの線引きをしていて、
どうやったら出来るかより『こうでないと納まらない』
という会話をよく耳にしてた。
今回のマロンクリームマシンミーティングの時間は、モノづくりとはどういう事か改めて教えられた時間となった。
ただ、見た目の完成でなく、使う人にとってどうあるべきかを考えること。
やれないのではなく、どうやったらやれるのかを考える。
常に考えながら取り組むことの大切さや、完成しても、もっと良い方法はないかと試行錯誤を繰り返すことの重要性。
その先にある達成感と楽しさ。
私にとってかけがえのない時間を過ごすことができた。

常識を疑う

建築現場にはいろんな場所に『当たり前(常識)』が存在している。
そして、それが正として納められている。
しかし、その当たり前に疑問を持たないことによって、新しい発想が生まれてこなくなる。
当たり前が悪いわけではなく、それ以上の探究心を持たないことが可能性を潰しているのではないかと思う。

この貴重な経験を生かし、これからもモノづくりを通して、より良い暮らしを育む空間創りをしていきたいと思います!

スタッフ紹介

前田敏行

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